2016年03月13日

インストラクション・ガイドライン(2)

インストラクション・ガイドライン(2)
 インストラクションを行う上でのガイドラインの続きです。

・1つの問題に対し、複数の解決法を有すること。他人の癖などを直す際に自分と同じ直し方がそのまま適用出来るとは限りません。よって、問題に対する解決法ではなく、問題を有する人に対する解決法を提供できる必要があります。

・忍耐力を失わないこと。新しいテクニックなどを教えた際に、「俺はこう教わった」や「これが自分に一番合う」と言って教えたやり方と異なるやり方などを頑なに固持する訓練生が存在します。彼らにはテクニックなどを見せて説明するだけでなく、そうやるべき理由を根気よく説明し続ける必要があります。

・説明力を磨くこと。新しいことを伝えた際に訓練生の理解が乏しい場合、それは訓練生の理解力不足が原因ではなく、インストラクターの説明力不足が原因かも知れません。1つの説明の仕方や展示では理解が得られない場合、別のやり方や見せ方を工夫する必要があります。

・ポジティブな評価を重視すること。知識や技術の間違いばかりを指摘するのではなく、その間違いに気付いたことや、間違いを修正したといったポジティブな内容を評価しなければ訓練生のやる気を維持させることは難しくなります。褒めることはご機嫌を取ることではありません。間違いは間違いとして指摘し、改善は改善として正当に評価する公平さが必要なのです。旧態依然の叱咤激励が唯一の方法であると信じ切っている人はインストラクターには向いていませんし、インストラクターとして成功しません。何かを教える・伝えるだけがインストラクターの仕事ではありません。次へのモチベーションを高めるのもインストラクターの重要な仕事です。

・改善点の指摘、矯正はその都度行うこと。一日の訓練が終わってからまとめてリストアップした悪かった点を伝えたところで、訓練生が有する問題は解決されません。ドリルを10行うのであれば、指摘・矯正のタイミングは10回あるべきです。何も指摘されないまま訓練が次々へと進んで行けば、訓練生が自分には問題がないと考えるのは自然な流れです。にもかかわらず最後の最後に問題点を指摘されたところで、もう直すチャンスは逃していますし、その際に指摘されなかったことに対して訓練生の反感や不信感を買うだけです。

・悪い点を指摘するだけや、一方的に矯正させることは避けること。訓練生が何か間違いを犯した場合、無条件でやり方を直させることは学習にはなりません。間違いがあった場合いきなりそれを指摘するのではなく、何をしたのか?何故そうしたのか?他に選択肢はなかったのか?などの質問をし、訓練生自らに間違いがあったことを気付かせる方が、本人の経験として深く脳裏に刻まれるので、同じ間違いを繰り返しにくくなります。

 簡単ではありますが、以上が一般的なインストラクション・テクニックの例です。前回の分と合わせて読まれるとお判りになったかと思いますが、インストラクターとして重要なことは教える内容よりも教え方になります。相手が1人であろが10人いようが同じです。伝えたことを相手が理解しない限り、教えたとは言えません。一般的なことであれば、伝えたことが理解されなくとも将来伝え直して理解を得る機会があるでしょう。しかし、タクティカル・インストラクターが教える内容は訓練生の命に係わることですので、下手をすると訓練の翌日に訓練生が亡くなってしまい次の機会は二度と訪れません。彼らの命を預かる身であることを再度認識して、その日の内に正しい知識と技術を理解させることが、この世界のインストラクターには求められます。前回と今回の記事が、これから部隊で指導員などの立場に立たれる方々に少しでも参考となっていれば嬉しく思います。
終わり



Posted by Shadow Warriors Training at 21:50 │トレーニング哲学