2015年12月26日

警察庁、自動小銃導入へ(2)

警察庁、自動小銃導入へ(2)
 銃を選択する際には操作性が重要な判断材料の1つになりますが、近年ではボディーアーマーが装備品として必需品となっていますので、昔ながらのウィーバー・スタンスではなく、小銃でもアイソセレスで構える傾向にあります。そうなると、89式やG36などのフルサイズのストックではボディーアーマーを着用した状態でアイソセレスに構えることがかなり難しいです。何故アイソセレスに構える必要があるのか?それが分からない人は近年のボディーアーマー、特にライフル・プレートの特性をよく知らないのでしょう。

 ところでここ数年の間に、ドイツ国内においてG36の性能に対して批判的な意見が聞かれています。アフガンでの戦闘の経験から、連射や環境などの影響で極端に銃身が熱せられた際の命中精度の低下が指摘されています。しかし、HK社や他による再検証ではその様な性能の低下は見られず、またドイツ連邦軍による検証実験にHK社がオブザーバーとしても参加させられていないなど、実際にどの程度の問題がるのか、そもそも一部で報告があったような命中精度ど低下といった問題があったのか、正式な報告者が出るまではまだ暫く時間がかかりそうです。

 そもそもG36は約20年間に渡り30ヵ国以上で使用され、ドイツ連邦軍だけでも約18万丁が使用されていますが、問題となっている性能の低下はここ最近まで全く聞かれていません。また、ドイツ連邦軍も正式にHK社に問題点を報告したこともなく、一部の「内部告発」的なものがメディアを通じて軍とHK社に挙げられた様な形ですので、本件の真相には興味があります。

 また、最近ではEOTECHが極端な気温差に晒されるとゼローイングがずれるとの指摘も挙げられています。約23℃の環境でゼローイングを行った際に、-40℃或は50℃の環境下で最大で4MOAのズレが生じると報告されています。極地で戦く部隊や世界中のあらゆる地域へ展開する特殊部隊であればこの問題は大きなものですが、限定的な地域で活動する警察部隊にとっては差ほど気にならない問題です。因みに4MOAのズレとは、100m先で約12cmの差になります。

 ただ、EOTECHは警察部隊が遭遇するであろう戦闘距離には最も有効な光学装置です。ローライトでの使用時には少々注意が必要ですが、Aimpointよりもレティクルが見やすのと、暗視装置と組み合わせて使用する際のレティクルの視認性の高さから、難しい訓練を必要とせず隊員が習熟することが可能です。逆に個人的には自衛官にはドットサイトよりもTrijiconのACOGを勧めたいです。近接戦闘から300mを超える射撃まで、サイトの修正をすることなく当てることが出来ますので、実際に使ってみてさすが海兵隊が装備しているものだと感心しました。

 話が逸れましたが、警察庁は自動小銃の配備だけでなく、防弾車両の装備も検討しているとのことです。アメリカのSWATで現在よく使用されているのがLENCO社のBearcatですが、この車体はNIJレベルIVの防弾性能を有しています。10名のフル装備の隊員が乗れますが、国内の道路事情を考慮すると残念ながら導入は難しいのではないでしょうか。ならいっそ軽装甲機動車は?最近は空自の一部部隊にも導入されつつありますが、海自と警察も導入するとなれば、製造コストの低下にも相互運用性の向上にも寄与出来るのでは?

 警察庁、自動小銃導入へ(2)
 また、噂では自衛隊は次期拳銃にS&W社のM&Pを候補に上げているとかいないとか。最近ロサンゼルス郡保安官事務所(LASD)で暴発事故が多発していると報告され、次期拳銃の選定作業に影響があるのではと言われていますが、これは機械的な問題から発生する暴発(Accidental Discharge)ではなく人為的な問題から発生する暴発(Negligent Discharge)が原因です。ただ単に新しい拳銃を装備された保安官が捜査に慣れていないだけでなく、ベレッタでは問題がなかった操作上の悪い癖が付いていたことから起こった事故であり、不用意に引き金に指をかけなければ撃発することはありません。

 そもそも、機械的な問題がない限り、薬室に装填され安全装置が解除された銃を地面に投げつけたところで撃針は落ちません。つまり弾は発射されません。アメリカでは信用しない人の目の前で地面に銃を落として証明しましたが、国内では「物品愛護」の精神から許されないでしょうね。しかし何故M&Pなのか?個人的には経験上GLOCKがお勧めなんですが。まあ、GLOCKの場合は工場出荷の状態で付いてくるサイトが欠陥品なので、XSサイトなどのトリチウム付きのナイトサイトに交換する必要がありますが。ま、政治的な問題ではなく、選定者の趣味が大きく反映されることですので、静かに見守るとしましょう。ただ、一度SWTでトレーニングを受けて頂き、戦闘状況下での極限の銃の取り扱い方法を学んで、新型銃の選定に活かしてもらえればと期待しています。
終わり



Posted by Shadow Warriors Training at 23:55 │小ネタ