2015年12月13日

対アクティブ・シューター戦術(2)

対アクティブ・シューター戦術(2)
 では運良く2名がほぼ同時に現着し、一緒に対処することとなった場合は?あまりにも広い建物や複数の階層からなる建物であれば、事前にそれぞれが担当するエリアを決めて、そのエリアを単独で対処するのが最も短い時間で犯人の居場所を特定出来る方法となります。ここで重要なのは、コミュニケーションです。今どのエリアを掃討中なのか、どのエリアに向かおうとしているのか、等など逐一お互いに情報を共有し合うことが重要となります。これはバックアップを求めたり同士討ちを避けるために欠かせないことですが、射撃だけを訓練している人と、チーム戦術を訓練している人との違いがここで顕著に表れます。

 戦闘時に行うべきことはたったの3つです。撃つ(Shoot)、移動する(Move)、そして連携する(Communicate)ですが、この3つめのコミュニケーションがチーム戦術では最も重要で不可欠ではあるものの、訓練レベルが低い場合には最も早い段階で脆く崩れ去るものになります。何も難しい言い回しを考える必要もなければ、決まった順番で物事を報告・連絡する必要もありません。単語だけであれ、主語が欠けていようと、互いに理解し合うことが出来ればそれで良いのです。コミュニケーションという行動には、送り手と受け手があり、その間にメッセージのやり取りがなされますが、重要なのはメッセージのやり取りの方法や内容ではありません。最も重要なことは、送り手の意図した内容のまま受け手がメッセージの内容を理解することにあります。

 首尾よく犯人の居場所に辿り着き2名で対処するとなった場合、どのような戦術が望ましいのか?軍隊が敵拠点を制圧するように、見える敵を次から次へと撃つのとは訳が違います。十数人の一般人を無差別に殺したとしても、犯人を殺さずに逮捕するのが警察官の宿命です。そこで2名以上味方がいる場合は、相手に迷いと混乱を生じさせるために挟み撃ちにします。2名が隣り合っていれば犯人にとっては1つの大きな的に過ぎませんが、2名が離れていれば犯人にとって2つの脅威となりますので、いわゆる相手に銃を振らせる状況をつくることが望めます。この「銃を振らせる」状況をつくることで、相手の思考回路を一時的に停滞させ、戦術的優位性が確保されます。

 では、実際にどのように挟み撃ちにするのか?言葉どおりに「挟み撃ち」をすれば、1本の線の端と端に警察官が居て、その間に犯人が居ることになりますが、これは最悪の状況です。どちらかの警察官が発砲すれば、もう1名が受傷することになるからです。そこで戦術的に正し「挟み撃ち」とは、互いの安全が確保されつつも相手にとって2つの離れた脅威となる「L字型」の配置になります。2名の警察官が「L字」のそれぞれの端に位置して、「L字」の交点に犯人が位置する形です。勿論、「逆L字」でも問題ありません。

 ただし、「L字」を作る際に重要なことがあります。それは、最大でも90度の角度とすることです。この角度が戦術的に非常に重要になります。2名が離れれば離れるほど犯人にとって銃を振る幅が大きくなりますが、90度を超える鈍角になると、相手が警察官同士の間に入り易くなってしまい、1直線上に並んでしまう危険性が高くなるからです。よって、「L字」型で犯人を挟み撃ちとする際には、2名が適度に離れつつも鋭角を保つことが重要になります。
終わり



Posted by Shadow Warriors Training at 22:07 │小ネタ