2015年03月01日

AARについて(2)

AARについて(2)
 前回はAARの手順として、全体の流れを説明しました。では今回はAARを実施する上での注意点を幾つか説明したいと思います。

1)リーダーだけでなく、全員を参加させる
部隊長(分隊長、小隊長、等など)が自分の部隊を代表して意見を述べるのではなく、隊員個人の意見を述べさせなければ意味がありません。

2)意見は短く述べさせる。
長くなるにつれて主たるトピックがなんであったのか薄れてきたり、話が別のトピックに移る場合があります。それを避けるために、出来るだけ短く意見を述べさせることが重要です。

3)参加者が他を個人的に批判したり、特定の人物を指さして間違いを指摘することは、絶対にさせてはならない。
前回述べたとおり、AARの目的は「正しい・間違い」の判断を下す為ではなく、「情報と思考プロセスの共有と認識」を図るためです。

4)参加者に何が悪かったのかを自覚させるが、決して批評しない。
上記3は、参加者同士のことです。4は、AARの進行役(コントローラー)のことです。別の方法を考えさせたり気付かせる、他のオプションを提案する、など建設的な方法で自分のとった行動が間違っていたことを気付かさせます。

5)本題と関係のない議論は止めさせる。
時間は無駄にしたくありません。また、議論すべき内容は訓練で実際に遭遇した局面に限られているので、「教範にはこう書いてある」だとか言い訳は強制的に打ち切ります。自らの行動の基準となった状況判断とその判断材料さえ述べさせれば議論はスムーズに進みます。「でも・・・」や「しかし・・・」等から始まる場合は十中八九言い訳です。

6)参加者に考えさせたり、気付かさせるような質問をする。
決して答えは与えません。何がベターであったか考えさせるのが大切です。一方的に悪い点を指摘したり答えを与えただけでは、その相手の心には響かず記憶の片隅にも残りません。反面、オプションを提示したり別の考え方や行動を考えさせたりすることで、その相手が主体的に理論や手法を見直すことで心にも記憶にも残ります。

7)訓練を通じて得た「教訓(Lessons learned)」を含めた総括を行い、当初のトレーニングの目的を満たしたか否かを述べる。
ここでも同じく批評してはいけません。問題点は進行役が教えるのではなく、参加者自身が気付くように仕向けることが重要です。進行役はその結果、次の(或は別の)訓練の必要性を示したり、次の訓練の課題を述べることはします。

 以上が進行役がAARを行うにあたって注意する点です。とは言っても議論は白熱し、人は他人を批判したがります。ですがAARの本来の目的は互いを批判させることではなく、別のやり方・別の考え方を気付かせることです。進行役がそのことを忘れて互いの言いたい事を言わせてしまうと、折角のAARが「朝まで生テレビ」になってしまうだけです。



Posted by Shadow Warriors Training at 22:22 │小ネタ