2015年02月08日

よくある勘違い

よくある勘違い
 タクティカルな世界にも様々な勘違いが存在します。今回はそれらの一部を紹介したいと思います。

 1)長距離射程の狙撃では、スピン・ドリフトとコリオリの効果が影響する。

 答:影響はあるかも知れないが、考える必要なし。

 こう言う問題を指摘したがるのは大概の場合は精密射撃マニアです。それか、狙撃の技術はないが知識だけあるマニアです。いずれも1,000m先にある直径3センチの標的を撃ち抜くには正確な弾道を計算する上で考慮する必要もあるでしょうが、狙撃で一番厄介な敵は「風」です。狙撃と精密射撃は違います。精密射撃では、じっくりと計算してベストなタイミングを待ち構えて、自分のタイミングで引き金を引くことが出来ます。しかし、狙撃の現場では刻々と変化する風の影響に対する修正値を算出しながら、時として他人のタイミングで引き金を引く必要があります。その様な狙撃の現場では、スピン・ドリフトやコリオリの効果なんて考えている暇はありません。
 よって、上記の2つの影響は気にする必要ありません。


 2)正確な狙撃には、コールド・ボアでの命中精度が重要である。

 答:戦闘状況下では初弾に限らず、発射した弾は全て命中させなければ意味がない。

 確かに2発目からは銃身が熱を帯びることにより着弾が初弾よりやや下がる傾向がありますが、標的が必ずしも1つとは限りません。2発目以降からの着弾の差は訓練中にデータを取っておくべきであり、標的が複数ある場合では2発目からはデータに応じて上下偏差を変えるか、ホールド・オーバーを用いて着弾を修正する必要があります。短時間で複数の標的に命中させる必要が存在する状況では、銃身が冷えるのを待っている余裕はありません。
 よって、コールド・ボア・ショットだけを重視するのは論外です。
 

 3)拳銃や小銃での戦闘射撃では、ダブルタップが最も効果的である。

 答:2発で敵が戦闘不能となる保証はない。
 
 訳の判らん意味のない所に数発当てたとこで敵は倒れませんし、2発がバイタルエリアに着弾したところでアーマーを着用していれば無意味です。「ダブル・タップ=効果的」との誤った図式が脳裏に焼き付いていると、敵の戦闘能力を奪い切っていないにも関わらず2発撃ったことに満足してそれ以上の攻撃を加えない危険性が生じます。特にCQBの様な交戦距離の近い戦闘では、敵を素早く無力化出来ないと次の瞬間には自分が無力化されてしまいます。従って敵を無力化させるためには1弾倉を丸々撃ち尽くそうが、何弾倉撃ち尽くそうが問題ではありません。
 よって、戦闘射撃では敵が無力化するまで撃ちまくるのが正解です。


 4)戦闘で優勢を保つには、最新の武器・装備が必要である。

 答:武器そのほか、好みが偏ってはいけない。(宮本武蔵)

 手にした物がなんであれ、その利点を最大限活用出来るのが本当の戦士です。その武器の長所も短所も知らずして、「最新式」などにこだわるのはマニアの証です。勝利への指針は4つありますが、武器・装備はその4つ目です。ヒエラルキーの最下層に位置します。武器・装備に優れていたアメリカやソ連はベトナムやアフガニスタンで勝利したでしょうか?世界の軍の中でも突出した武器・装備を有する米軍はイラク・アフガン戦争に何年費やしましたか?完全勝利を収めましたか?
 最も重要なのは、心構え(マインドセット)です。例として、SWTのトレーニングでは最新式の光学装置などは持ち物リストに入っていません。持っているならば使用して頂いてますが、必須ではありません。それよりも昼夜を問わず極力アイロンサイトだけで実施します。何故か?官品を実際に使用する時は何もアクセサリーが付いていない状態ですので、それに最も近い形でトレーニングすることが武器の短所を理解すると共に、その短所を補う技術と戦術を身に付ける上で重要であると考えているからです。
 よって、道具のせいにするのは愚の骨頂です。

 とまあ、こんな感じです。勿論挙げればキリがないので今回は4つだけにしましたが、気が向いたら追々書き足していきたいと思います。どの世界も一緒で、「百聞は一見に如かず」です。どれだけ知識を持っていたとしても、実際に色々試してみて結論を出さなければ、その知識を100%役立たせることは不可能です。



Posted by Shadow Warriors Training at 21:47 │小ネタ