2014年12月07日

ブリーチングあれこれ(2)

ブリーチングあれこれ(2)
 では相手に突入を悟られにくくするにはどうすればよいのか?ステルス・エントリーの最たる例がピッキングです。実際にアメリカではSWAT隊員にピッキングを教えるスクールもあります。軍隊においては工兵部隊などでピッキングを教えている国もありますが、どこの国の軍隊でも少なくない数の隊員が入隊前からピッキングの「素養」を備えている場合があり、戦場などでその「才能」を発揮するケースがあると聞きます。

 この突入方法の利点は音が静かであることですが、欠点はやや時間がかかることです。加えて、アラームが設置されている場合は、従来のピッキング技術だけでは完全に開錠することが出来ません。仮にピッキングで開錠を試みたにも関わらずアラームが作動してしまったら、皆さんはどうしますか?無線で状況を報告して指示を仰ぎますか?現実的にはその様な時間的余裕はありませんので、アラームが鳴ったと同時にダイナミック・エントリーに移行すべきです。

 注:写真の兵士は棚のビールを盗みたい訳ではありません。

ブリーチングあれこれ(2)
 強行突入モードに移行となれば全員が素早く対応しなければなりません。瞬時の判断で行動出来るようになるまで繰り返しシナリオを変えて訓練し、作戦立案時にもステルス・エントリーが第1案であればダイナミック・エントリーを第2案として準備しておく必要があります。

 バテリングラムなどの強行突入用のツールは重くて持ち歩きに不向きであることから、突破口近辺に置かれたままにされたり、突破口形成要員と突入要員とが別になっているケースが良く見受けられます。確かに「統計的」には建物の一番外側の扉などが最も強固に補強されていたり、複数の鍵が設置されていたりしますが、建物内部の扉などが一切補強などされていない保障は皆無です。よって、突入用ツールは最後まで携行することが勧められます。

ブリーチングあれこれ(2)
 場合によっては相手が強行突入を予期して扉などを強固に補強し過ぎて手持ちのツールでは破壊出来ない場合があります。爆薬を用いれば良いとの意見があるでしょうが、周辺環境などを考慮した結果、使用するには適さないケースもあります。その様な場合に備えて、アメリカのSWATではバテリングラムやハリガンツールを備えた装甲車を装備している部隊もあります。

 ただし、この場合は突破口まで装甲車が近づけれることが絶対条件であることから、庭先に障害物が多い場合などは別の方法を用いる必要があります。つまり最も重要なことは、これまで紹介した全ての突入方法に精通しているだけでなく、その状況において何がベストなのか?第2案はどうするべきか?などと言った、作戦立案力と現場の臨機応変さであると言えます。

 2回に渡り色々なブリーチング方法を紹介しましたが、これらは(ショットガンを除き)現代の警察や軍隊によって開発された手法ではありません。丸太を縛り付けた荷車で屋敷の門に突っ込んだり、火薬を仕掛けて城の門に人が入れる突破口を形成したりと、歴史の中で同様な手法が洋の東西を問わず実践されてきました。それら歴史上の事例を調べることは決して単なる趣味ではなく、自身が突入する際の作戦立案の参考にもなります。

ブリーチングあれこれ(2)



Posted by Shadow Warriors Training at 17:01 │小ネタ