2014年12月01日

ブリーチングあれこれ(1)

ブリーチングあれこれ(1)
 ブリーチングとは戸口破砕などと訳されることもありますが、基本的には突入部隊の進入口を確保するための行為です。各国の軍や警察では使用者の安全性の確保と使用のための訓練が最も簡単であることから、メカニカル・ブリーチ(機械的破砕)の一種であるエンジンカッターが多用されています。我が国の警察でもレスキュー機材として機動隊に配備されているエンジンカッターやチェーンソーを、聞き分けの悪い輩の居所や立ち回り先へのガサ入れの際に用いているのはご存知のとおりです。

 写真は米沿岸警備隊のとある部隊の訓練風景ですが、この隊員は専用に作られたエンジンカッター用の背負子を背負っています。エンジンカッターは刃となる円盤を交換することで、鉄筋や鉄板からコンクリートに至るまで切断することが出来る大変パワフルな道具ですが、反面音が大きい、重い、切断にある程度の時間を要することから、スピードが求められる突入にはあまり適した道具とは言えません。

 しかしながら、その存在と独特のエンジン音は相手に対する脅しとなり得ますので、ガサ入れ時にその存在をアピールするだけで頑として立ち入りを拒んでいた連中も態度を軟化させることもあります。

ブリーチングあれこれ(1)
 では聞き分けがとりわけ悪く、かつ素早い突入が必要な場合の手段として有用なのは?エクスプロッシブ・ブリーチ(爆破)が挙げられます。近年では大阪でのガサ入れの際に採用された事例もあり、特に証拠隠滅の恐れが極めて高い案件や人質救出などと言ったスピードが求められるケースでは極めて有効な手段です。

 反面、取扱いにはそれ相当の訓練が必要であり、国内ではどの建物でも使える訳ではありません。特に日本の一般家屋は木造建築ですので、爆破の際に発生する熱や爆炎で建物が延焼する危険性もあります。また、爆破対象物の反対側に人がいると破片で傷つけてしまう恐れがありますので、展開には十分な作戦立案が必要となります。

ブリーチングあれこれ(1)
 国内では装備面から実用例がありませんが、海外で頻繁に用いられるのがショットガンを使ったバリスティック・ブリーチ(弾道破砕)です。大抵の場合、熊射ち用のスラッグを用いて蝶番やドアノブなどを破壊します。一昔前はSASなどではブリーチング用に銃身を短く切り詰めたショットガンをバンジーコードで肩からぶら下げたりしていましたが、現在はフルサイズのショットガンを装備して、弾も00バック(ダブルオーバック・鹿射ち用)とスラッグの双方を携帯して用途に応じて弾を選択して使用しています。

 蝶番やドアノブを破壊するには角度が重要となります。銃を対象物にあてがう角度と、銃をドアから放す角度の両方です。この方法は先の2つと同じく大きな音を立てますので、いわゆるダイナミック・エントリーでの戦術となります。ショットガンの発射音は小銃の発射音よりも大きく、また小銃弾の乾いた発射音に比べて鈍く低い独特の発射音を発しますので、ブリーチングに用いたことが敵から推測され易いです。

 また爆破と同じく、吹き飛ばしたドアノブのパーツなどがドアの向こう側に飛散しますので、不用意に人を傷つける危険性があることも考慮しなければなりません。

その2へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 21:41 │小ネタ