2014年06月06日

CQB(2)

CQB(2)
 では戦術的に危険を伴う階段の使用を極力無くすにはどうすれば良いのか?欧米の警察系特殊部隊がよく使う手段が、ハシゴとプラットフォームが装備された専用の装甲車を用いた上層階へ直接突入する方法です。窓から直接建物内に突入する場合もあれば、非常階段のおどり場などを介して突入するやり方が一般的です。

 この手法を用いる代表的な利点は以下の通りです。
 1)犯人が予期せぬ場所から突入することによる奇襲が可能
 2)階段を利用した上層階への移動が不要
 3)直接上層階へ突入することによる時間の短縮が図れる

 しかーし、物事全てがそうであるように、利点だけでなく欠点も存在します。代表的なものは以下の通りです。
 1)突入出来る高さに限界がある
 2)接近の際に察知される可能性がある
 3)突入口が施錠されていたりした場合、破砕する必要が生じるので奇襲性がなくなる(このため、アメリカではSWAT隊員を対象としたピッキングのクラスもあります)
 4)一度に上がれる人数に制限がある

 従って部隊指揮官と所属長はそのような専用の装甲車が本当に必要か吟味する必要があり、使用する上ではこれらの様な欠点をいかにして克服できるかを考えて訓練しておく必要があります。例えば欠点2)であれば、接近と同じタイミングで別の方向からネゴシエーターなどが呼びかけて注意を反らしたり、犯人の注意を引き付けるための小芝居をうったりするのが一般的です。

 では実際に接近中に察知されて攻撃を受けたら?装甲車ですので中の乗員に関しては安全性は高いですが、既にプラットフォーム上に居れば防弾壁がない場合が殆どです。皆さんであればどうしますか?「一時退却」を選択する方が多いのでは?ですが突入するには理由があったはずです。単に犯人が単独で立て籠もっていれば危険を冒して突入する必要はありません。突入するには人質などの人命を救助する必要性があったからです。となれば、多少の犠牲は覚悟してそのまま突っ込むことも視野に入れておかなければなりません。

 部隊長を始め隊員全員が腹をくくる必要があります。軍や警察では個人の戦いではなく、人質救出などの作戦目的が存在し、部隊はその目的達成を第一優先事項として任務に臨みます。この心構え(マインドセット)を誤ると、個人の都合を優先してしまい作戦目的を達成させることが出来なくなってしまいます。



Posted by Shadow Warriors Training at 20:35 │小ネタ