2014年06月01日

CQB(1)

CQB(1)
 「CQBで何が一番難しいか?」と聞かれたら、私は間違いなく「階段の移動要領」と答えます。階段は極めて特殊な閉鎖空間であり、様々な設計タイプのものが存在します。一直線で次の階へ続くもの、折り返し(おどり場)があるもの、折り返し部分が吹き抜けとなっているもの、螺旋状のもの、踏み板の間に隙間があり見通せるもの、等など実に様々です。

 階段の途中には有効な遮蔽物が存在しませんので攻撃を受けたら進むか戻るかの2つに1つしか対応策がなく、また、先に挙げた異なるタイプの階段ごとに誰がどの位置をカバーするのか非常にややこしいです。

 一番前の隊員の姿勢に注目して下さい。私や常々「教科書的な射撃姿勢にこだわるな」と言っていますが、彼の姿勢はどうでしょうか?彼は上に行きたいのですが、普通に上がると写真手前側に背中を向けることになります。しかし、この写真の状況では、写真手前側に脅威が存在する(可能性)があるために、後ろ向けに階段を登らざるを得ません。

 後ろ向けに歩くだけでも転倒の可能性がありますが、それが階段となれば一層転倒の可能性が高くなります。そこでこの隊員は安全に後ろ向けに登れるように、片腕で銃を構えてもう一方の腕で手すりを掴んで転倒のリスクを下げています。おどり場まで行けば両手で銃を構えることが出来ますが、そこに至るまでに接敵したら勿論片手で射撃します。

 世の中にはウィーバーやアイソセレス等といった様々な射撃スタイルが存在しますが、それらはあくまでも射場や競技場で有効なテクニックです。実戦ではそれよりも、「右構え、左構え、右腕のみ、左腕のみ」の4通りを状況に応じて選択する必要があります。当スクールのクラスを受けた皆様は既にドリルで嫌ほど味わっていますが、非利き手のみでの射撃(弾倉交換を含む)は決して見よう見まねで習得できるものではありません。

 また、写真の隊員のM4カービンにはM203グレネードランチャーが付いています。皆さんは自分の小銃を片腕で構えて移動しながら射撃することが出来ますか?片腕で構えられないのであれば対処方法は次の2つのうちの1つです。①無駄なアクセサリーを外して銃を軽くする。②腕力を含めた筋力アップに励む。

 装備の新旧や良し悪しは重要なファクターではありません。人間同士の戦いにおいては個人の心身が最も重要なファクターとなります。マインドセット(心構え)、ストレングス(筋力・持久力)、そしてテクニックとタクティクス(技術と戦術)。歩兵戦術では古来から武術で言うところの「心・技・体」が重要となるのです。



Posted by Shadow Warriors Training at 16:28 │小ネタ