2013年05月25日

ナイフによる攻撃

 イギリスにて反英思想を持つイスラム原理主義者によるテロと呼べる殺人事件が発生しましたが、今回は爆発物や銃器でなくナイフを用いていたことが大きな特徴と言えます。我が国と同じ位とまではいきませんが、英国も銃規制が厳しい国です。しかし、ナイフとなれば入手が容易であるだけでなく、犯人が携帯していても銃器より隠匿性が高いことから、法執行官にとっても発見が容易でないことが大きな問題です。

 一般的に銃を用いた犯行よりもナイフを用いた犯行の方が殺傷性が低いと思われがちですが、それは大きな間違いです。その攻撃範囲内においては、刃物(ナイフに限らず料理用の包丁なども含む)は銃器と同レベルの殺傷能力を有しています。FBIがアメリカにおける殺傷事件について興味深い統計を出していましたので、以下に紹介します。
 ・警察官を標的とした事件のうち、攻撃が刃物によるもので警察官が死亡した割合:3%
 ・警察官を標的とした事件のうち、攻撃が銃器によるもので警察官が死亡した割合:4%
 ・銃器による負傷者のうち、傷を負ったことにより死亡した割合:10%
 ・刃物による負傷者のうち、傷を負ったことにより死亡した割合:30%

 また、別の研究によると、
 ・ナイフによる攻撃は正確で、かつ、弾丸よりも深い傷を負わせることがある。
 ・至近距離での攻撃では、ナイフの持つ殺傷能力は銃器のそれを上回る。
とされています。ナイフを振り下ろす際の運動エネルギーは、被害者の体に接触する際に刃という非常に面積の小さな部分に集中することから、至近距離で攻撃されると深く大きな傷を負うこととなります。

 さらに、鑑識や解剖の立場から見た刃物による攻撃は、
 ・典型的な殺人事件において、刃物による傷は肋骨の間を貫けて深さ3~4センチ程に達している。
 ・殆どのケースにおいて、被害者は複数の傷を負っている。典型的な死因は、最後の数回の攻撃にて受けた傷とされている。
 ・刀身の短いものでも、肋骨に守られていない腹部の場合、傷の深さは8~10センチにまでに達する。
 ・3センチの長さがあれば、肋骨を貫ける。
 ・4センチの長さがあれば、心臓に達する。
といった特徴が挙げられます。

 相手の攻撃がナイフであろうが銃器であろうが、最も大事なことは警戒態勢を緩めないことです。これは何も戦地での話しだけでなく、街中でも該当します。携帯でメールを打ちながら歩いていたり、周囲の音が聞こえない程の音量で音楽プレーヤーを使用している等、周囲の状況を観察することが出来ないと攻撃対象にされたり攻撃の予兆を掴んだりすることが出来ません。

 平和な日本でも、通り魔などによる殺傷事件が至る所で発生しています。武術的なディフェンス・テクニックをここで書くことは出来ませんので、このブログでは警鐘を鳴らすだけに留めておきます。周囲をよく観察し、疑わしい人物がいたら手元と腰周りに注意して下さい。攻撃は通常、手から繰り出されるものであり、武器は大抵の場合、腰周りに隠匿されています。

 もう一度言っておきます。反撃の技を習得するのは2の次です。最も大事なことは、警戒態勢の維持と異常事態の早期発見に努めることです。



Posted by Shadow Warriors Training at 23:34 │小ネタ