2020年06月27日

装備と教育について(1)

装備と教育について(1)
 先月陸自が新型小銃と新型拳銃の採用を発表しました。見た目からは、ようやく欧米諸国と足並みが揃った武器が配備されるようになった感があります。握把から手を離さないと安全装置を切り替えることが出来ない小銃や、見た目だけ立派で装弾数が回転式けん銃と差ほど変わらない拳銃からようやく脱却する動きとなったようですが、全部隊への配備は何年先になるか分かりませんし、おそらく予備自はずっと64式を持たされるのだろうと思います。

 今回の新型小銃は水機団などを中心とする離島防衛に主として従事する部隊への優先配備を念頭に、水陸両用作戦に不可欠な水はけの良いデザインとしたと報道ではされていましたが、それなら拳銃はSFP9でなく、NATOの対塩害基準をクリアしたSFP9Mにした方が良かったのでは?と個人的には思いますが。また、取り扱う者の訓練レベルや運用規則などを考えれば、セーフティー付きのSFP9Sでも良かったのでは?とも思います。

 巷では銃のデザインや構造などから単純に良し悪しが語られており、また著名な元特殊部隊員のYoutube動画や雑誌記事などのレビューだけを参考に、ああだこうだとのコメントが出されている様ですが、今回もSWT的な目線で語りたいと思います。

 先ず最初に言っておきますが、動画や雑誌などでのレビュー記事は銃器メーカーの広告の役目を果たすために、ネガティブなコメントはされません。Larry Vickers氏の動画でSFP9が紹介されていますが、彼のコメントを鵜呑みにする前に、動画がどの様な経緯で紹介されたかを正しく知る必要があります(注:Vickers氏を批判する訳ではありません)。彼はHK社からSFP9を送られており、レビューを頼まれています。依頼に際して金銭の受け取りがあったか否かは分かりませんが、少なくとも彼は私費でSFP9を購入しておらず、少なくともその時点でHK社へ借りが出来ています。よって忖度なしのガチなレビューではなく、べた褒めする様な内容で動画が締めくくられているのです。雑誌の記事も同じです。編集部が自らお金を出して撃ち比べる様な企画であれば別ですが、大抵の場合はメーカーから渡されてトレーニングなどで使用した感想を求められますので、どうしても批判的なレビューにはならないのです。

 20式小銃についてですが、FN社などの小銃のコピーと言われても仕方がないでしょう。既に存在してある程度の使用実績がある銃に近い形に成らざるを得ないのが実情です。いきなり奇をてらったデザインを試してみても、使用感が悪い・実用性がない、などの理由でテスト段階で淘汰されるのがオチですから、生き残った試作品は自ずと既に存在する欧米の銃器に似るのは仕方がないことでしょう。20式の良い点としてはマグウェルがあることと思います。これにより銃の構え方にバリエーションが増えますので、特に市街地や屋内戦といった教範通りの射撃姿勢がとれない現代の戦場においては利点です。

 また、グレネードランチャーの装備も可能となっている点も、運用上小部隊で戦場に赴かざるを得ず火力面での問題を抱える水機団や空挺団にとっては利点と言えるでしょう。ただ、問題は既存のベルトとサスペンダーでは、ウエストの細い小柄な隊員は40㎜グレネードを収めるポーチを付ける隙間がもうありません。追加される装備品などを身につけるためにも、銃を一新すると共に弾納などもベトナム線時代のアリスクリップから脱却させて欧米規格のウェビングを配したチェストリグやプレートキャリアに変えることが求められます。

 銃床が伸縮式となりチークパッドも高さを変えることが出来るようになった様ですが、どうせ武器庫に格納する際には見た目の統制という理由から、銃床の長さもチークパッドの高さもどの銃も同じに揃えることが求められるでしょうから、武器出しする度に自分に合わせた調整をする手間が残るのは予想されます。
(2)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 17:47 │小ネタ