2017年12月03日

戦場での輸液について(1)

戦場での輸液について(1)
 戦場では医療資源が限られています。医療資源とは、医薬品や医療キットだけでなく、必要なケアを施す技量を有する隊員の有無や、その様な隊員の訓練・知識レベルも含みます。市街地を含め野外では様々な負傷の形態がありますが、戦闘衛生では負傷ごとのリスクに応じた対処法を訓練している訳ではありません。その理由としては医療資源が限られている問題と、戦場という特殊な環境における負傷の中で応急処置による延命が可能か否かといった問題があることから、助けたいという理想と助かる可能性という現実のバランスをとった内容だけに特化しているからです。良く言えばバランスを取ったと言えますが、悪く言えば妥協案に落ち着いたとも言えます。

 TCCC/CLSの訓練を受けた方ならお分かりかと思いますが、戦闘衛生で最も重要視しているケアが大量出血への対処です。これが統計的に見て死者集が多いことから理由ですが、CLSの役割としては止血による失血死の防止に留まります。ですが、衛生隊員の場合はTCCCの第2、第3段階のケアに係わることから、止血帯を必要とする程度の損傷を受けた負傷者の安定化に努めるために、戦場における輸液は外すことの出来ない訓練課目となっています。

 残念ながら日本国内では薬事法や医師法の悪影響のせいで、強いて言えば厚労省や医師会の圧力によって、自衛官や法執行官はもちろん、救急業務に従事する消防隊員ですら現場で輸液を行うことが出来ません。よってこういった技術を実際に学びたい場合は、私と同じように是非海外のスクールで訓練を受けて下さい。幸い私はSWATメディックや陸軍18D(特殊部隊の医療担当軍曹)が教官を務めるコースを受けることができ、演習場で実弾射撃訓練を行いながら生食を用いて筋肉注射や静脈注射を行ったりする医療訓練をこれまで150時間ほど実施してきました。

 そこで、最近MARSOC(米海兵隊特殊部隊)が戦場で用いて話題となったフリーズドライ血漿や、第75陸軍レンジャー連隊が実施する全血輸血プログラムについて、戦場での輸液の必要性や注意点などについて、数回に渡り解説したいと思います。
(2)へ続く



Posted by Shadow Warriors Training at 23:58 │小ネタ